ラブブはただのぬいぐるみではない——そんな不穏な噂がSNSを中心に広がっている。かわいらしい見た目とは裏腹に、「悪魔の人形」と呼ばれ、所有者のもとで奇妙な現象が相次いで報告されているのだ。中には、不気味な体験をした人が“お焚き上げ”によって人形を処分するという異常事態も発生。さらに、背後に「闇の勢力が関与している」「特定のエネルギーを封じ込めている」といった陰謀論まで飛び交う始末。本記事では、ラブブをめぐる“悪魔の人形説”と、その裏にある噂や真相を徹底解明していく。
そもそもラブブとは?
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ラブブとは、タイで古くから信仰されてきた子供の姿をした精霊人形のことです。正式には「ルークテープ」と呼ばれ、タイ語で「子供の神様」を意味します。もともとは商売繁盛や金運向上、家内安全などの願いを込めて祀られる縁起物として、タイの人々に親しまれてきました。人形には魂が宿るとされ、まるで本当の子供のように大切に扱われます。食事を供えたり、服を着せ替えたり、話しかけたりすることで、持ち主に幸運をもたらすと信じられています。近年日本でもSNSや動画サイトを通じて知名度が上がり、その独特な風習と不思議な逸話から注目を集めるようになりました。しかし同時に「呪いの人形」という誤った認識も広まってしまったのです。
ラブブ人形は悪魔なの?呪いの人形と言われる理由
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ラブブ人形が「呪いの人形」や「悪魔の人形」と呼ばれるようになった背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。本来は幸福を願う縁起物であるにもかかわらず、日本のインターネット文化の中で恐怖の対象として扱われるようになったのです。その理由は主に、センセーショナルな都市伝説動画の影響、悪魔パズズとの関連付け、人形の不気味な外見、持ち主の心理状態による自己暗示、そして処分方法の特殊性などが挙げられます。これらの要素が組み合わさることで、本来の信仰対象としての意味合いが歪められ、オカルト的な恐怖の象徴として一人歩きしてしまいました。文化的背景を理解せずに表面的な情報だけが拡散された結果、誤解が生まれたと言えるでしょう。
理由①都市伝説動画の拡散
ラブブが「呪いの人形」として広まった最大の理由は、YouTubeやSNSで拡散された都市伝説系の動画やオカルト記事の影響です。視聴者の興味を引くために、「持ち主が不幸になった」「夜中に人形が動いた」「捨てようとすると祟られる」といったセンセーショナルな内容が次々と投稿されました。これらのコンテンツは再生数を稼ぐために、事実を誇張したり、無関係な怖い話と結びつけたりすることが多く、視聴者に強烈な印象を与えました。特に心霊系や怖い話を好む層に広く受け入れられ、「ラブブ=危険な呪いの人形」というイメージが定着してしまったのです。情報の真偽を確かめることなく拡散されたため、本来の文化的意味が失われ、恐怖の対象として一人歩きする結果となりました。
理由②パズズ説と悪魔の依代というウワサ
ラブブが悪魔と関連付けられる理由の一つに、古代メソポタミア神話の悪魔「パズズ」との関係を主張する説があります。パズズは疫病や災厄をもたらす風の悪魔とされており、その姿が子供のような小さな像で表現されることがあります。この共通点から、ラブブ人形がパズズの依代になるという都市伝説が生まれました。さらに「人形に悪霊が宿りやすい」「適切な供養をしないと祟られる」といったオカルト的な解釈が加わり、恐怖心が増幅されていきました。しかし実際には、ラブブとパズズには何の関係もなく、文化的背景も全く異なります。タイの伝統的な精霊信仰と古代メソポタミアの神話を無理やり結びつけた、根拠のない俗説に過ぎないのです。
理由③不気味な見た目が恐怖心をあおる
ラブブ人形の外見そのものが、多くの人に恐怖や不安を与える要因となっています。リアルな子供の顔を模した表情、じっと見つめるような目、精巧に作られた小さな手足など、人間に似ているがどこか違和感のある「不気味の谷現象」を引き起こすデザインです。特に日本人にとっては、伝統的な日本人形や市松人形とは異なる独特の造形が、一層の不気味さを感じさせます。また、持ち主が人形に服を着せたり、ベビーカーに乗せて外出したりする光景は、文化的背景を知らない人には異様に映ります。この視覚的インパクトが、「呪いの人形」というイメージを強化する役割を果たしました。見た目だけで判断され、恐怖の対象として扱われてしまったのです。
理由④心理的影響による「自己暗示」説
ラブブを所有した人が不運に見舞われたという報告の多くは、心理学的な「自己暗示」や「確証バイアス」で説明できる可能性があります。「この人形は呪われている」という先入観を持って接すると、日常的に起こる小さな不運やトラブルまでもが「人形のせい」に思えてしまうのです。例えば、誰にでも起こりうる体調不良、人間関係のトラブル、仕事での失敗などを、すべて人形と結びつけて考えてしまいます。この心理状態が続くとストレスや不安が増大し、さらに悪い出来事を引き寄せる悪循環に陥ることもあります。つまり、人形自体に呪いの力があるのではなく、持ち主の心理状態が現実に影響を与えている可能性が高いのです。恐怖心が生む自己実現的な予言と言えるでしょう。
理由⑤焼却・お焚き上げのインパクト
ラブブの処分方法が「呪いの人形」というイメージを強める一因となっています。タイでは、ラブブを手放す際には寺院で僧侶による適切な儀式を行い、魂を抜いてから焼却やお焚き上げをするのが一般的です。この厳粛な処分方法が、知らない人には「普通に捨てられない危険なもの」「特別な呪術的儀式が必要な恐ろしいもの」という印象を与えてしまいます。日本でも、神社仏閣での人形供養が行われますが、ラブブの場合は海外の文化という特殊性も加わり、より神秘的で不気味に感じられるのです。また「勝手に捨てると祟られる」という噂が広まったことで、処分への恐怖心が増幅され、「呪いの人形」という認識がさらに強化されました。文化的な敬意の表れが、誤解を生む結果となったのです。
ラブブの人形が加熱する理由
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ラブブ人形が注目を集める理由には、現代社会特有の心理的ニーズと情報拡散のメカニズムが関係しています。まず、孤独や不安を抱える現代人にとって、人形を子供のように大切にすることで心の安らぎを得られるという側面があります。ペットロスや子育て後の空虚感を埋める代替的な存在として機能するのです。一方で、オカルトブームやホラーコンテンツの人気により、「呪いの人形」としての話題性も人々の興味を引きつけます。SNSでの拡散力も無視できません。珍しい人形を持っているという優越感や、怖い体験談を共有することで得られる注目が、さらなる購入や話題化を促進します。癒しと恐怖という相反する要素を併せ持つことが、ラブブが継続的に注目される理由と言えるでしょう。
最後に
ラブブ人形は本来、タイの伝統的な信仰に基づいた幸福をもたらす縁起物です。しかし文化的背景を理解せずに、恐怖や興味本位で扱われることで「呪いの人形」という誤ったイメージが定着してしまいました。インターネット上の情報を鵜呑みにせず、その文化や歴史を正しく理解することが大切です。人形を持つこと自体に善悪はありませんが、他文化への敬意を持ち、自分の心理状態を冷静に見つめることが重要でしょう。もし不安や恐怖を感じるなら、無理に関わらないことも一つの選択です。一方で、本来の意味を理解して大切に扱うなら、それは文化交流の一形態とも言えます。大切なのは、情報を正しく理解し、自分自身の判断で適切に向き合うことです。ラブブに限らず、異文化を尊重する姿勢を持ち続けたいものです。